2.飛行機雲
「とーこ、飛行機雲になりたい」
澄んだ声が言う。
燈子の声は澄んでいる。と、思う。
高いわけではないのに、透き通っている。
「そしたら、あの空のキャンパスに、グーンッて」
燈子は小さな体いっぱい使って表現する。
細い腕を大きく広げて、……飛んでいってしまいそうだ。
「絵を書くの!」
燈子は顔中を使って、笑う。
無防備な笑顔は、汚れがない。
「良いでしょう?」
嬉しそうに燈子は言う。
何がそんなに楽しいのか。
自分には……わからない。
「ね、宗ちゃん」
同意を求められても、困る。
燈子と違って、飛行機雲になってみたい。と、思ったことはないのだから。
だから、いつものように燈子の小さい頭を撫でた。