はいつだってその背中を追いかけていた。
護衛武将なのだから当然だし、仕事だ。
ただあまりにも追いかけ続けているから違う意味でも意識してしまう。
ありえないことを考えて、その度に首を横に振る。
もしも。
他のみんなのように、自分の名前を呼んでもらえたら。
物語のように甘くなくいてもいい。
家族が呼んでくれたように、あたたかさがなくてもいい。
やさしさの欠片もなくたっていい。
事務的でかまわない。
名前を呼んでもらえたら。
自分だけ呼んでもらえないことに気が付いてしまったから、より気になるようになった。
司馬懿様の書卓の上の水色のおはじきちゃんにも名前がついているのかな?
名前を呼んでもらえるのかな?
ずっと隅っこに置いてある。
定位置にみたいに。
どれだけ竹簡の山ができようとおはじきちゃんはいる。
殿から貰ったおはじきに名前を付けようとしたら怒られたから。
あのおはじきちゃんも名前がないのかもしれない。
でも、私は人間で、親から貰った名前があるのに。
モノじゃないのに。
……でも、補充の効く道具のひとつだ。
護衛武将なんて。
いつの日か別れがくる。
その日がいつかは知らないけど。
絶対にやってくる。
たったひとつしか持っていないものだったから、使い道はもう決めている。
護衛武将になったのも。
今でも唯一であることも。
意味のないことはない。
その運命の日を受け止める覚悟ならはできている。
最後まで焼き付けていたいから。
はささやかで大きな願いを持つ。
大好きな人に。
は持っているものは生命ぐらいしか価値がない。
それを捧げる覚悟はできているから。
生命が途切れるまでの日の間に、一度でも名前を呼んでほしい。
モノである護衛武将として大それたそんな野望を願ってしまう。
は、そっと祈りにも似た望みを心の中で抱きしめる。
『診断メーカー』
作成者:憂@torinaxx
メーカー名:「ランダムワードパレット」
『間違いは甘い』
受け止める、知らない、意識してしまう
(hug!)