創世神話


 神は世界を識り、新たな世界を創った。

 大地を創り、空と分けた。
 海を創り、山を創り、森を創った。
 ありとあらゆる物をお創りになられた。

 自分に似た生き物を創った。
 それが天族である。

 対になる生き物を創った。
 それが魔族である。

 時は流れた。

 天族と魔族は混ざり合い、どちらでもないものが生まれた。
 これが混族である。
 世界の中で、神がお創りになっていないものはこの混族だけである。

 さらに時が流れた。
 天族と魔族はどちらが真に神の御心に沿っているのか、争いあうようになった。
 世界の隅々まで争いは広がった。

 神は嘆き悲しみ、天族と魔族を隔てることをお決めになられた。
 誰にも乗り越えられない壁をお創りになられ、鍵を閉められた。
 どちらでもないか弱き物は御手近くに。
 神は門を設け、そびえたつ塔の中に鍵をしまわれた。

 見放された天族と魔族は神の代弁者として、王を立てた。
 天王と魔王である。




 この世界には「神」はいない。
 何故なら、世界を創りし神はすでに立ち去ったのだから――。